『injured ZERO』20周年/太田哲也氏インタビュー
2018.04.26
「injured ZEROは、一般道における死亡・負傷事故をゼロとするプロジェクトです。
20年前にレースで受傷した私が『injured ZEROプロジェクト』を今日まで継続して進めてきたのは必然だったのかもしれないと思います。
クルマの事故で不幸にも死んでしまうこともあれば、死ななくてよかったというケースになることもあります。
でも、死ななくてよかったと人から言われますが、身体に障害が残ったり、社会復帰できなかったりと、本人にしてみれば必ずしもよかったとは言い切れません。
私も身体に傷を負い、心も傷ついてしまって心身のバランスが崩れ、死んだほうがよかったと思ったことがありました。そのような状況の中で、悲惨な目に遭う人を無くしたいと思うようになりました。
人は辛い目に遭うと、必然的に、こんなことはもう二度と起こってほしくない、自分でもう終わりにしてほしい、と思うようになるんだと思います。
クルマに深く携わっている我々は、クルマが不幸な事故を起こす一方で、人生の歓びを与えてくれるものであることを知っています。ですから、けしからんというのではなく、クルマにはネガティブな部分があることをしっかり意識しながら、バランスよく付き合っていくことが大事だと思っています。
そして、ネガティブな部分への対処法を知ることが大事で、それはつまりドライバーが自身の腕を磨くことが大事ではないでしょうか。
20年を振り返ると、クルマの楽しい部分を享受しつつも、ネガティブな部分を伝えることが私の使命なのかな、そういう役目だったのかなと思っています。
どうやら、そういった本質的なことが周りの人たちにも見えていて、関係者の想いも同じだったようで、数多くの方々のバックアップしていただきました。そして、injured ZEROプロジェクトは社会貢献として捉えられるようになってきたと感じます。それには心から感謝しています。
injured ZEROプロジェクトはこれからも続いていきます。賛同してくれる人がもっと増えて、長きにわたって意志を引き継いでくれる人が出てくるといいなと思っています。
すでに株式会社スポーツドライビングジャパン(代表:隠岐麻里奈)が私の意志を引き継いでくれているので、このスキームが未来につながっていくのが次の20年の夢ですね」。